スポーツ界でプロを目指す選手にとって、「プロ志望届」は避けて通れないステップの一つです。
特に高校生や大学生アスリートにとっては、人生の大きな分岐点となる提出行為だけに、その意味や仕組みをしっかり理解しておく必要があります。
この記事では、「プロ志望届とは何か?」という基本的な疑問から、誰が・いつ・どのように提出するのか、提出による影響やリスクまでを丁寧に解説します。
このページでわかること
- プロ志望届の制度と目的
- 提出が必要な競技と対象者の違い
- 提出の手順と時期の具体例
- 提出後の進路とドラフトの流れ
- 提出すべきか悩んだときの考え方
プロ志望届とは

項目 | 回答 |
---|---|
提出可能選出 | 高校3年生/大学4年生 |
提出不要選手 | 社会人選手 硬式野球部に所属しない選手 |
提出期限 | ドラフト会議の2週間前まで |
適用対象リーグ | NPB/MLB/独立リーグ |
プロ野球志望届とは、野球選手がプロ野球選手としてのキャリアをスタートさせるために必要な手続きの一つです。正式には「プロ野球志望届」と呼ばれ、これは選手がプロ野球への入団を希望する意思を公式に示すために提出します。
プロ志望届の定義と役割
プロ志望届とは、アマチュア選手が「プロ入りを希望する」という意思を正式に表明するための書類です。これを提出しなければ、ドラフトなどのプロ選抜対象にはなりません。
特にプロ野球では、日本高野連や全日本大学野球連盟に提出することで、スカウトが公にアプローチできるようになります。主な役割は以下のとおりです。
- 選手の「プロ入り希望」の意思を明確化する
- スカウトやチームがリストアップできるようにする
- 選手の進路に関する透明性を確保する
つまり、「プロになる覚悟」が問われると同時に、「チャンスを広げるための申告」でもあるのがこの制度の特徴です。

提出が必要な競技と対象者
プロ志望届は、すべての競技で共通しているわけではなく、競技団体ごとに制度の有無や提出条件が異なります。以下は主な競技と対象者の一例です。
競技 | 対象者 | 提出先 |
---|---|---|
野球(プロ野球) | 高校生・大学生・社会人 | 日本高野連、全日本大学野球連盟など |
サッカー(Jリーグ) | 主に大学生・高校生 | 各学校・日本サッカー協会経由 |
バスケットボール(Bリーグ) | 高校生・大学生 | 所属校・リーグ事務局 |
また、社会人の場合は所属チームを通じた申告が必要になる場合もあり、競技・立場ごとの制度確認が不可欠です。
プロ志望届の提出方法とスケジュール

プロ志望届を提出するには、所定の手続きや書類を準備し、決められた期間内に対応する必要があります。競技や立場によって多少の違いはありますが、基本的な流れは共通しています。
提出に必要な書類と手続き
プロ志望届の提出には、所定の用紙を用意し、必要事項を記入した上で、所属機関(学校やチーム)を通じて提出する形が一般的です。主な手続きの流れは以下の通りです。
- 所定の志望届用紙を入手する(連盟公式サイトなど)
- 本人が記入し、保護者・監督の署名や捺印をもらう
- 学校または所属団体の承認を得る
- 提出先(高野連、大学野球連盟など)へ提出する
競技によっては、オンライン提出が可能な場合や、学校経由での提出が義務付けられているケースもあります。手続きを始める前に、必ず最新の案内を確認しておきましょう。
提出期間とスケジュールの例
提出期間は競技団体によって異なりますが、例年のスケジュールはある程度固定されています。以下は主要競技における提出時期の例です。
競技 | 提出期間の例 | 備考 |
---|---|---|
プロ野球(高校生) | 8月下旬〜9月下旬 | 日本高野連が公表 |
プロ野球(大学生) | 9月上旬〜ドラフト前日 | 大学野球連盟を通して提出 |
Jリーグ | 夏季・冬季に複数回 | 特別指定選手制度と連動 |
特にプロ野球の場合は、提出締切がドラフト会議の前日までとなっており、提出しなければ指名対象になりません。スケジュールの把握は最優先事項です。

近年のプロ野球志望届の提出人数
西暦 | 提出人数(高校生) |
---|---|
2019年 | 139名 |
2020年 | 215名 |
2021年 | 159名 |
2022年 | 154名 |
2023年 | 139名 |
2024年 | 159名 |
プロ志望届の提出は、毎年100名から150名の高校生が行うというのが一般的な傾向です。2023年には139名の高校生がプロ入りを目指して志望届を提出し、前年の154名からはわずかに減少しています。
特に注目すべきは、2020年のコロナ禍中に記録された215名という過去最高の提出者数です。この年は、甲子園をはじめとする多くの春季・夏季大会が中止となり、選手たちにとっては自身をアピールする機会が著しく減少しました。
そこで救済策として「プロ志望高校生合同練習会」が開催され、参加するためにはプロ志望届の提出が必要とされました。これが提出者数の増加につながった背景にあります。
しかし、有力球児の中には未提出者も目立ち、彼らがどのような進路を選択するのかに注目が集まっています。
プロ志望届の導入背景
プロ志望届は、2004年から野球界において運用されています。この制度が導入された主な背景には、過去に発生したドラフト会議のトラブルが大きく影響しています。これらのトラブルを解消し、より公平性と透明性を高めるために、プロ志望届の提出が義務付けられました。
トラブル事例:1985年「KKドラフト事件」

特に有名なトラブルとして挙げられるのが、1985年の「KKドラフト事件」とも呼ばれる、桑田真澄選手の読売ジャイアンツ(巨人)入団騒動です。
桑田選手は当時高校3年生で、進路に関して大きな注目を集めていました。彼が大学進学を表明したにも関わらず、巨人は桑田選手をドラフトで指名し、そのまま入団に至りました。この出来事は、下記のような多くの疑問や疑惑を呼び起こしました。
- 巨人と桑田選手が裏で繋がっていたのではないか?
- 大学進学の表明は他球団の指名を回避させるための策略ではないか?
これらの疑惑については、事実ではないとされていますが、このようなトラブルが繰り返されることで、ドラフト会議の信頼性が問われることとなりました。
プロ志望届の提出要件
プロ野球志望届は、特定の選手にとって重要なステップです。具体的には、硬式野球部に所属する高校3年生と大学4年生が対象です。これらの選手は、それぞれ日本高等学校野球連盟と大学野球連盟に対して、プロ野球選手としてのキャリアを目指す意志を示すためにこの書類を提出します。
提出不要な選手
- 社会人選手
- 硬式野球部に所属しない選手
これらのグループは、プロ志望届の提出対象外です。ここで、疑問に思われるのが、提出不要の選手のなかで「硬式野球部に所属しない選手」でしょう。それでは次に、そのような事例をご紹介します。
2011年ドラフト7位 日ハム大嶋選手
このルールに関連し、話題となったのが、2011年に北海道日本ハムファイターズからドラフト7位で指名された大嶋の事例です。大嶋は、早稲田大学のソフトボール部に所属しており、硬式野球の経験はありませんでした。
プロ野球志望届の提出もしていなかったため、彼の指名は多くの人々を驚かせるサプライズとなりました。大嶋は、プロ野球選手としては前代未聞の経歴を持つ選手として注目を集めました。
また、大嶋選手と同様のケースの場合だと、その他にもロッテにいた飯島秀雄選手も指名されています。飯島選手は、1964年、1968年の五輪代表です。
プロ志望届まとめ
プロ志望届制度は、選手がプロ入りを希望する明確な意思を示すことを可能にし、ドラフト会議の信頼性を向上させています。過去に起きた「KKドラフト事件」のようなトラブルを教訓に、プロ野球界はよりクリーンな選手選抜方式を模索してきました。
プロ志望届はその一環として導入され、選手自身の進路選択を尊重しつつ、すべての球団が平等な条件で新たな才能を迎え入れる機会を持つことができるようになりました。
この記事を通じて、プロ志望届がどのようにプロ野球界の改革に貢献しているのかを理解し、選手と球団、そしてファンが共に公正なスポーツの世界を築くための基盤がどのように形成されているかについてご理解いただければ幸いです。