プロ野球の「現役ドラフト」は、近年注目度が急上昇している制度です。各球団のベンチ入りを逃している実力者たちに新天地での活躍の場を与えることを目的とし、ファンの間でも議論が活発になっています。特に2025年は、これまで以上にドラマティックな移籍劇が繰り広げられた年となりました。
「なぜあの選手が移籍?」「どうしてこの球団は動かなかったのか?」など、ファンの疑問は尽きません。本記事では、現役ドラフトの基本的な仕組みから、今年の動向、過去の実例、さらには他国制度との比較まで、幅広く深掘りして解説していきます。
このページでわかること
- 現役ドラフト制度の目的と導入背景
- 対象となる選手の選定ルールとプロテクトの仕組み
- 2025年現役ドラフトの開催日と指名結果
- 各球団の戦略的な動きと意図の読み解き
- 過去の成功例・失敗例と今後の制度の課題
プロ野球の現役ドラフトとは

現役ドラフトは、日本野球機構(NPB)で、2022年より導入されている移籍制度です。
この制度は日本プロ野球選手会が出場機会の少ない中堅選手の移籍活性化を目的として導入を希望していたもので、2018年から選手会とNPBとの間で折衝を開始。各年の結果をまとめました。

2022年の結果
| 指名球団 | 選手名 | 守備 | 所属球団 |
|---|---|---|---|
| オリックス・バファローズ | 渡邉 大樹 | 外野手 | 東京ヤクルトスワローズ |
| 福岡ソフトバンクホークス | 古川 侑利 | 投手 | 北海道日本ハムファイターズ |
| 埼玉西武ライオンズ | 陽川 尚将 | 内野手 | 阪神タイガース |
| 東北楽天ゴールデンイーグルス | 正隨 優弥 | 外野手 | 広島東洋カープ |
| 千葉ロッテマリーンズ | 大下 誠一郎 | 内野手 | オリックス・バファローズ |
| 北海道日本ハムファイターズ | 松岡 洸希 | 投手 | 埼玉西武ライオンズ |
| 東京ヤクルトスワローズ | 成田 翔 | 投手 | 千葉ロッテマリーンズ |
| 横浜DeNAベイスターズ | 笠原 祥太郎 | 投手 | 中日ドラゴンズ |
| 阪神タイガース | 大竹 耕太郎 | 投手 | 福岡ソフトバンクホークス |
| 読売ジャイアンツ | オコエ 瑠偉 | 外野手 | 東北楽天ゴールデンイーグルス |
| 広島東洋カープ | 戸根 千明 | 投手 | 読売ジャイアンツ |
| 中日ドラゴンズ | 細川 成也 | 外野手 | 横浜DeNAベイスターズ |
2023年の結果
| 指名球団 | 選手名 | 守備 | 現所属球団 |
|---|---|---|---|
| 阪神タイガース | 漆原 大晟 | 投手 | オリックス・バファローズ |
| 広島東洋カープ | 内間 拓馬 | 投手 | 東北楽天ゴールデンイーグルス |
| 横浜DeNAベイスターズ | 佐々木 千隼 | 投手 | 千葉ロッテマリーンズ |
| 読売ジャイアンツ | 馬場 皐輔 | 投手 | 阪神タイガース |
| 東京ヤクルトスワローズ | 北村 拓己 | 内野手 | 読売ジャイアンツ |
| 中日ドラゴンズ | 梅野 雄吾 | 投手 | 東京ヤクルトスワローズ |
| オリックス・バファローズ | 鈴木 博志 | 投手 | 中日ドラゴンズ |
| 千葉ロッテマリーンズ | 愛斗 | 外野手 | 埼玉西武ライオンズ |
| 福岡ソフトバンクホークス | 長谷川 威展 | 投手 | 北海道日本ハムファイターズ |
| 東北楽天ゴールデンイーグルス | 櫻井 周斗 | 投手 | 横浜DeNAベイスターズ |
| 埼玉西武ライオンズ | 中村 祐太 | 投手 | 広島東洋カープ |
| 北海道日本ハムファイターズ | 水谷 瞬 | 外野手 | 福岡ソフトバンクホークス |
2024年の結果
| 指名球団 | 選手名 | 守備 | 現所属球団 |
|---|---|---|---|
| 読売ジャイアンツ | 田中 瑛斗 | 投手 | 北海道日本ハムファイターズ |
| 阪神タイガース | 畠 世周 | 投手 | 読売ジャイアンツ |
| DeNAベイスターズ | 浜地 真澄 | 投手 | 阪神タイガース |
| 広島東洋カープ | 山足 達也 | 内野手 | オリックス・バファローズ |
| 広島東洋カープ(2巡目) | 鈴木 健矢 | 投手 | 北海道日本ハムファイターズ |
| 東京ヤクルトスワローズ | 矢崎 拓也 | 投手 | 広島東洋カープ |
| 中日ドラゴンズ | 伊藤 茉央 | 投手 | 楽天イーグルス |
| 福岡ソフトバンクホークス | 上茶谷 大河 | 投手 | 横浜DeNAベイスターズ |
| 北海道日本ハムファイターズ | 吉田 賢吾 | 捕手 | 福岡ソフトバンクホークス |
| 千葉ロッテマリーンズ | 石垣 雅海 | 内野手 | 中日ドラゴンズ |
| 東北楽天ゴールデンイーグルス | 柴田 大地 | 投手 | 東京ヤクルトスワローズ |
| オリックス・バファローズ | 本田 圭佑 | 投手 | 埼玉西武ライオンズ |
| 埼玉西武ライオンズ | 平沢 大河 | 内野手 | 千葉ロッテマリーンズ |
プロ野球の現役ドラフトの仕組み

現役ドラフトの主な仕組みですが、まず指名対象選手はNPBの各12球団が提出(指名)した選手です。
ただし、下記の選手は指名対象外となります。
- 育成選手
- 外国人選手
- 複数年契約を結んでいる選手
- 翌季の年俸が5,000万円以上の選手
→ただし、1名に限り年俸5,000万円以上1億円未満の選手を対象とすることは可) - FA権を保有している/または行使したことがある選手
- シーズン終了後に育成から支配下契約となった選手」は指名対象外。
- 前年の年度連盟選手権試合終了の日の翌日以降に、選手契約の譲渡によって獲得した選手
各球団の指名順序
次に選手の獲得方法についての流れをご紹介します。
- 各球団は欲しい選手1名に投票(予備指名)
- 1番人気の選手の所属球団が1番目の指名権
- 1番目の指名権を獲得した球団が指名
- 2番目の指名権は1番目に選択された選手が所属する球団
- 12球団が各1人を指名した時点で1巡目の指名終了
- 2巡目は指名意思を示した球団で行い、1巡目の指名の逆順
それで最も多くの票を獲得した球団、言い換えると予備指名で人気の選手を保有している球団が1番目の指名権を獲得します。
予備指名で最も多くの票を獲得した球団が複数になった場合や、たとえば1巡目で指名された球団が既に指名を終えている場合など細かなルールはありますが、以上が選手選択の概略です。
非公開である理由
現役ドラフトは非公開で行われます。
各球団は、対象選手リストの内容を秘密情報として厳格に管理することが求められます。対象選手全体リストの内容を、現役ドラフトの指名の目的以外に使用してはなりません。
ただし、現役ドラフトの結果、指名された選手の氏名についてはこの限りでありません。これは、選手の保護の観点からなされる措置であって、たとえば、「あの球団はこの選手が構想外であったんだ」などと勘繰られないようにするためでもあります。

まとめ|現役ドラフトで見るプロ野球の新たな一面
現役ドラフト制度は、出場機会に恵まれなかった選手に新たな活躍の場を与え、球団の戦力バランスを再編する役割を担っています。2023年の初実施以降、年々その注目度は高まり、選手・球団・ファンそれぞれにとって影響の大きいイベントとなりました。
実際に制度の動向を追う際には、「なぜこの選手が移籍するのか」だけでなく、「球団がどのような補強や育成を狙っているのか」という視点を持つと、プロ野球の奥深さがより鮮明に見えてきます。
応援している球団や選手に対する見方を一段深めながら、現役ドラフトという制度を前向きに捉えることで、プロ野球観戦の楽しみ方はさらに広がるでしょう!


