FA(フリーエージェント)についてご存知でしょうか。おそらく多くの方が選手が移籍する球団を選ぶ権利を取得できる制度と認識されているのでしょうか。この認識でも大まかには正しいです。
ちなみに、2022シーズン終了時点では国内FA権を取得したのは24名、海外FA権を取得したのは19名いました。
昨シーズンまで福岡ソフトバンクホークスで活躍した千賀滉大選手は、この海外FA権を行使して2023シーズンからMLBのニューヨーク・メッツに移籍しています。
そこで本記事では、FAの獲得条件や国内・海外FAの違いについても解説します。
プロ野球のFA(フリーエージェント)とは
ここでいうFA(フリーエージェント)とは、日本野球機構(NPB)における国内FA及び海外FAのことを指します。
国内FA:NPBが定める国内FA資格条件を満たした者がNPBのいずれの球団とも契約を締結することができる権利
海外FA:NPBが定める海外FA資格条件を満たした者が国内外のいずれの球団とも契約を締結できる権利
FA権を取得した者は、FA宣言すると一旦は球団に所属しないフリーの選手になります。 FA宣言しなければ次年度もFA権を持ってる状態ということになります。
つまり、FA宣言をして前所属球団と契約することも可能で、FA移籍が成立した場合、移籍先から移籍元へ金銭補償や人的補償が必要になる場合があります。
国内FAと海外FAの資格条件
FA | 条件 |
---|---|
国内FA | 145日以上一軍登録したシーズンが8シーズンに到達 |
海外FA | 145日以上一軍登録したシーズンが9シーズンに到達 |
国内FAに関して、大学・社会人出身に関しては145日以上一軍登録したシーズンが7シーズンになります。
つまり、高卒ルーキー(18歳)で入団した選手は最低でも26歳にならないとFAを獲得できません。そのため、もとよりメジャー志向が強かった大谷選手などはFAではポスティング制度を使用してメジャーに挑戦しています。
ポスティング
海外FAに似た制度にポスティングシステムがあります。
これは、海外FA権を持たない選手が球団との間で合意したのち海外移籍に向けた交渉をする制度です。
- イチロー
- ダルビッシュ有
- 大谷翔平
- 鈴木誠也
- 吉田正尚 など
上記のようなトップ選手もポスティングシステムによりMLBに移籍しています。
プロ野球のFAで発生するお金のルール
年俸/契約金
年俸 | ※前シーズンと同額が上限 |
契約金 | 定め無し |
FA宣言をしてNPBの所属球団に移籍する場合、1年目の年俸は前シーズンの年俸と同額が上限となります。
なお、契約金に関する定めはありません。
ちなみに、海外FAに関しては年俸の上限縛りがありません。そのため、ポスティングを使ったメジャー挑戦よりもFA制度を利用した挑戦の方が金額面では得する移籍方法となります。
FAによって発生する補償
国内FAのルールでは選手を年俸の額などによりA・B・Cの3つにランク分けされます。
ランクに応じて金銭+選手の補償を行うことが定められているため、FAによって選手を手放した球団はFA選手の移籍先の球団から補償選手を獲得できます(人的補償)。
ランク | 補償 |
---|---|
Aランク | 年俸の80%/人的補償+年俸の50% |
Bランク | 年俸の60%/人的補償+年俸の40% |
ちなみに、2度目のFA行使の場合は、金銭による補償の割合が1度目の半額となります。
プロ野球のFAとポスティングの違い
ポスティングシステム:海外FA権を持たない選手が球団との間で合意したのち海外移籍に向けた交渉をする制度
ポスティングシステムでは、移籍について選手と日本球団の間で合意し、球団からメジャーリーグ・コミッショナーに該当の選手が契約可能である内容の通知をします。
その後選手は、獲得に名乗りをあげた複数の球団と交渉し、最終的に契約可否の判断をします。
リリース料(譲渡金)
ポスティングシステムでは、移籍先のMLB球団から該当選手の所属するNPB球団にリリース料(譲渡金)が支払われます。
以前は2000万ドルを上限とする入札制でした。しかし、2018年から下記ルールに変更されております。
契約金 | 支払割合 |
---|---|
2500万ドルまでの部分 | 20% |
2500~5000万ドルまでの部分 | 17.5% |
5000万ドル超の部分 | 15% |
計算例
22年オフにポスティングによってMLB移籍を果たした吉田選手を例に計算してみます。
レッドソックスはオリックスからポスティングシステムで吉田を9000万ドル(約126億円)で獲得したため、
- 2500万ドル×20%
- 2500万×17・5%
- 4000万ドル×15%
上記の合計が1537万5000ドル(約21億5000万円)となります。
2022シーズンオフにFA宣言をした選手
2022シーズンオフにFA宣言をした選手は次のとおり。
埼玉西武ライオンズの外崎選手、阪神タイガースの岩崎選手と西選手はFA宣言をするも同じ球団と契約しています。
国内FA宣言選手
球団 | 選手名 | ポジション | 移籍先 |
---|---|---|---|
オリックス・バファローズ | 伏見 寅威 | 捕 手 | 北海道日本ハムファイターズ |
埼玉西武ライオンズ | 森 友哉 | 捕 手 | オリックス・バファローズ |
埼玉西武ライオンズ | 外崎 修汰 | 内野手 | 埼玉西武ライオンズ |
横浜DeNAベイスターズ | 嶺井 博希 | 捕 手 | 福岡ソフトバンクホークス |
阪神タイガース | 岩崎 優 | 投 手 | 阪神タイガース |
海外FA宣言選手
球団 | 選手名 | ポジション | 移籍先 |
---|---|---|---|
福岡ソフトバンクホークス | 千賀 滉大 | 投 手 | ニューヨーク・メッツ |
北海道日本ハムファイターズ | 近藤 健介 | 外野手 | 福岡ソフトバンクホークス |
阪神タイガース | 西 勇輝 | 投 手 | 阪神タイガース |
プロ野球のFA/ポスティングまとめ
FA:NPBが定める国内/海外FA資格条件を満たした者がNPBのいずれの球団とも契約を締結することができる権利
FAを獲得するためには、一定期間の一軍活躍実績が必要です。
ポスティングシステム:海外FA権を持たない選手が球団との間で合意したのち海外移籍に向けた交渉をする制度
一方でポスティングは、FA権をもたなくてもメジャー移籍を可能とする制度です。