コリジョンルールとは、本塁でのクロスプレーによる危険な衝突を防ぐために設けられたルールです。
簡単にいうと、走者による捕手への危険な体当たりと、捕手による走路のブロックを禁止するルールです。
MLBでは2014年から本塁での衝突を制限するルールが導入され、日本プロ野球(NPB)では2016年から「本塁での衝突プレイ」に関する規則が導入されました。ただし、捕手が走路に入っただけで必ずコリジョンルールが適用されるわけではありません。
送球がそれた場合や、走者との接触が避けられなかった場合などは適用されないケースもあります。
この記事では、コリジョンルールの基本から適用条件、導入されたきっかけ、守備・走塁への影響までわかりやすく解説します。
コリジョンルールとは
コリジョンルールは、本塁で発生する危険な接触プレーを防ぎ、選手の安全を守るためのルールです。
NPBでは野球規則6.01(i)「本塁での衝突プレイ」として定められています。ルールは大きく分けると、走者側と守備側の2つがあります。
| 対象 | 禁止されている主なプレー |
|---|---|
| 走者 | 捕手や本塁をカバーする野手への故意の体当たり |
| 捕手・野手 | ボールを持っていない状態で走者の走路を不必要にふさぐ行為 |
つまり、走者は守備者に体当たりしない、守備者は走者の走路を不必要にふさがないというのが基本です。
走者側のルール
走者は、捕手や本塁をカバーする野手に接触することを目的として、故意に走路を外れることができません。
たとえば、本塁ではなく捕手を狙って進路を変えたり、肩から激しく体当たりしたりするプレーです。
審判員が、走者が最初から守備者との接触を目的としていたと判断した場合は、守備者がボールを保持していたかどうかに関係なくアウトになる場合があります。
一方、本塁へ通常のスライディングをした結果として捕手と接触した場合は、基本的に違反とはみなされません。走者側で重要なのは、捕手ではなくホームベースへ向かって走塁することです。
捕手側のルール
捕手や本塁をカバーする野手は、ボールを持っていない状態で走者の走路を不必要にふさぐことができません。
コリジョンルール導入前は、捕手がホームベースの前に体を入れ、走者の進路を体で止める「ブロック」がよく見られました。
現在は、ボールを持つ前から走路を完全にふさぐような守備は認められていません。明らかに走路を妨害したと判断された場合は、走者にセーフが宣告されることがあります。
送球がそれた場合は例外になる
捕手が走路に入ったからといって、必ずコリジョンルールが適用されるわけではありません。
送球が大きくそれたため、捕手が走路に入らなければ捕球できなかった場合などは例外です。
送球を処理するために必要な動きとして走路へ入った場合や、接触を避けることが難しかった場合は、コリジョンルールが適用されないことがあります。
そのため、「捕手が走路にいた=自動的にセーフ」ではありません。
コリジョンルールが適用されるケース
| プレー | 判定の考え方 |
|---|---|
| 走者が捕手を狙って体当たりする | 走者側の違反となり、アウトになる可能性がある |
| 捕手がボールを持たずに走路を完全にふさぐ | 守備側の違反となり、セーフになる可能性がある |
| 送球がそれて捕手が走路へ入る | 送球を処理するために必要な動きなら適用されない場合がある |
| 走者が通常のスライディングをして接触する | 適正なスライディングなら原則として違反ではない |
| 捕手がボールを持った状態でタッチする | 通常のタッチプレーとして扱われる |
コリジョンルールが物議を醸す理由
コリジョンルールは、適用されるたびに話題になることがあります。
大きな理由は、判定がそのまま得点につながるからです。
- アウトとセーフの判定が1点に直結する
- 捕手が走路をふさいだか判断が難しい
- 送球を捕るための動きとの境界がわかりにくい
- 以前ならアウトだったプレーがセーフになる場合がある
野球では、1点が試合の勝敗を左右することも珍しくありません。特に本塁でのクロスプレーは、一瞬のプレーでアウトかセーフかが決まります。
そのため、コリジョンルールの適用によって判定が変わると大きな注目を集めます。現在は、明らかな体当たりや明らかな走路妨害があったプレーを中心に判断されます。
コリジョンルールが導入されたきっかけ
MLBではバスター・ポージーの負傷が大きなきっかけ
MLBで本塁クロスプレーの危険性が大きく注目された出来事の一つが、2011年5月25日のジャイアンツ対マーリンズ戦です。
延長12回、ジャイアンツの捕手バスター・ポージーと、本塁へ突入したマーリンズのスコット・カズンズが激しく衝突しました。
ポージーは左足を大きく負傷し、そのシーズンの残りを欠場しています。このプレーなどをきっかけに、本塁での危険な衝突について議論が進みました。
MLBでは2014年シーズンから、本塁での衝突を制限するルールが導入されています。
なお、ポージーは翌2012年に復帰し、ナショナル・リーグMVPを獲得しました。
日本プロ野球では2016年から導入
NPBでは2016年シーズンから「本塁での衝突プレイ」に関する規則が導入されました。
日本では、特定の1プレーだけを理由に導入されたわけではありません。MLBでのルール変更や、日本球界でも危険なクロスプレーが問題になっていたことなどを背景に導入されています。
阪神でプレーしていたマット・マートンの本塁突入も、大きな議論になったプレーの一つです。
当時は、走者と捕手が本塁で激しく衝突するプレーが現在より多く見られました。
こうした接触による大きな怪我を防ぎ、選手の安全を守ることがコリジョンルールの大きな目的です。
コリジョンルールによる守備への影響
コリジョンルールの導入によって、特に大きく変わったのが捕手の守備です。
以前のようにホームベースを体で完全に隠し、走者を止めることはできなくなりました。
| 項目 | 主な変化 |
|---|---|
| 捕手の立ち位置 | 走者の走路を空けた状態で送球を待つことが基本になった |
| タッチ | 捕球後に素早く走者へタッチする技術がより重要になった |
| 外野からの送球 | 捕手が捕球からタッチへ移りやすい位置への送球が重要になった |
| 中継プレー | 送球の速さだけでなく、送球位置の精度も重要になった |
捕手の立ち位置が変わった
コリジョンルール導入前は、捕手がホームベース上や走路上に入り、体全体で本塁を守るプレーが一般的でした。
現在は走路を確保しながら送球を待ち、捕球してからタッチする形が基本です。
そのため、捕球からタッチまでをいかに速く行うかが以前より重要になっています。
送球の位置がより重要になった
外野手や中継に入る野手にも変化があります。捕手が走路を自由にふさげないため、単純にホームベース付近へ返球するだけでは十分ではありません。
捕手が捕球してから素早くタッチできる位置へ送球することが重要です。
たとえばライトから本塁へ送球する場合、一塁側へ大きくそれると、捕手は走者とは反対側へ体を動かさなければなりません。
その分、捕球してからタッチするまでに時間がかかります。
コリジョンルールの導入によって、外野手には肩の強さだけでなく、捕手のタッチまでを考えた送球精度がより求められるようになりました。
コリジョンルールによる走塁への影響
走者側も、本塁への入り方が変わりました。
以前は捕手との衝突を前提としたプレーもありましたが、現在は捕手ではなくホームベースへ向かうことが基本です。
| 項目 | 主な変化 |
|---|---|
| 本塁への進入 | 捕手ではなくホームベースを狙って進入する |
| スライディング | タッチをかわしながら本塁へ触れる技術が重要になった |
| 三塁コーチ | 送球位置や捕手の動きも含めて本塁突入を判断する |
特に重要なのがスライディングです。
捕手へ体当たりすることはできないため、走者はタッチをかわしながらホームベースへ触れる必要があります。
捕手のミットから遠い場所へ手を伸ばすスライディングや、回り込んでホームベースへ触れるプレーも重要になります。
三塁コーチの判断にも影響する
三塁コーチャーは、外野手の肩や走者のスピードだけでなく、送球の位置や捕手の動きも考えて判断します。
特に二死の場合や、次打者との兼ね合いによっては、多少厳しいタイミングでも本塁へ突入させる場面があります。ただし、コリジョンルールがあるからといって、無理な本塁突入がすべて有利になるわけではありません。
正確な送球が返り、捕手がボールを保持した状態でタッチすれば通常通りアウトになります。
コリジョンルールについてよくある疑問
捕手がホームベースの上にいたら必ずセーフ?
必ずセーフになるわけではありません。
送球を捕るためにやむを得ず走路へ入った場合や、すでにボールを保持している場合は、通常のタッチプレーとして扱われることがあります。
捕手と走者が接触したらコリジョンになる?
接触しただけではコリジョンルール違反とは限りません。
走者が通常のスライディングをしていた場合や、送球処理の結果として接触を避けることが難しかった場合などは、違反にならないことがあります。
捕手はホームをブロックできない?
ボールを持っていない状態で、走者の走路を不必要にふさぐことはできません。
一方で、ボールを保持した後の通常のタッチプレーまで禁止されているわけではありません。
コリジョンルールはいつから始まった?
MLBでは2014年シーズンから、本塁での衝突を制限するルールが導入されました。
NPBでは2016年シーズンから導入されています。
コリジョンルールまとめ
- コリジョンルールは本塁での危険な衝突を防ぐためのルール
- 走者による捕手への故意の体当たりは禁止されている
- 捕手はボールを持たずに走路を不必要にふさぐことができない
- 送球がそれた場合などは例外になることがある
- MLBでは2014年、NPBでは2016年から導入された
コリジョンルールで特に覚えておきたいのは、「捕手と走者が接触したらコリジョン」というルールではないことです。
走者が守備者へ故意に接触したのか、捕手が不当に走路をふさいだのか、送球を捕るために必要な動きだったのかなどを見て判断されます。
筆者自身も捕手としてプレーし、高校野球の指導にも携わっていました。コリジョンルール導入前と比べると、捕手の立ち位置や送球を受ける位置、タッチの考え方は大きく変わりました。
指導する側としても、以前の捕手の常識がそのまま通用しなくなった部分があります。
一方、本塁での激しい衝突による大きな怪我を防ぐという意味では、選手の安全を守るために重要なルールだと考えています。



