判定にモヤッとした瞬間、監督が手を挙げて映像検証へ――それが「リクエスト制度」です。審判の判定を映像で確認し、誤りがあれば場内でコールを訂正します。
対象となるプレーや回数の数え方、成功時・失敗時の扱い、そしてメジャーとの差など、意外と細かな決まりが多く、理解しておくと観戦の見え方が大きく変わります。
この記事では、導入の背景からルールの全体像、よくある勘違いまでを丁寧に整理します。
このページでわかること
- リクエスト制度の目的と導入の経緯
- 対象になる/ならないプレーと回数のルール
- 映像検証の流れと判定が覆る条件
- 成功率データの見方と現場の傾向
- MLBとの違いと今後の改善ポイント
プロ野球のリクエスト制度とは
リクエスト制度とは、際どいプレーに対して異議を唱えることができる制度です。リクエストの権利は監督が保持しているため、監督がリクエスト申請しない限りは申請が認められません。
しかし、選手から監督にジェスチャーをすることで、監督がリクエストするパターンが多いです。やはり、プレーの当事者の感覚的に審判の判断が間違っているのであれば、申請が覆る可能性が高そうです。
リクエスト条件
- 1試合2回まで
- 成功の場合は回数が減らない
- 延長戦の場合は申請権利が1回付与
- リクエスト対象のプレーが決められている
上記それぞれの条件・ルールがあります。延長戦は1イニングごとの権利が1度付与されます。

対象プレー
基本的にリクエスト制度はほとんどのプレーの対象です。アウト/セーフの判定で使われることが多いです。逆に対象外のリストが下記になります。
- ストライク、ボールの判定
- 打者のハーフスイング
- 走塁妨害や守備妨害
- インフィールドフライ
- 塁審より前の打球(内野ゴロ)など
機械的に判定できない(ビデオ判定)できないプレーはリクエスト対象外です。
リクエストできるプレーとできないプレーの一覧
対象と対象外をひと目で確認できるようにまとめます。
区分 | 主な内容 | 補足 |
---|---|---|
できる | 各塁のアウト/セーフ、フェア/ファウル、本塁打の有無 | ポール際、際どいタイミングプレーなど |
できる | 本塁での衝突プレー(コリジョン)、危険なスライディングの確認 | 走路妨害や併殺崩しのチェック |
できる | 頭部死球の有無、フェンス際・スタンド際での捕球、本塁打判定 | 完全捕球の確認やボールの越境判定を含む |
できない | ストライク/ボール、ハーフスイング | 投球判定は対象外 |
できない | ボーク、自打球、インフィールドフライ宣告の適否 など | その性質上、映像での確定が難しい項目を含む |
リクエスト制度の成功率
2020年のデータになります!
監督 | 成功数 | 失敗数 | 成功率 |
---|---|---|---|
楽天(三木監督) | 22 | 28 | .440 |
DeNA(ラミレス監督) | 20 | 30 | .400 |
日本ハム(栗山監督) | 21 | 33 | .389 |
巨人(原監督) | 12 | 19 | .387 |
ロッテ(井口監督) | 16 | 27 | .372 |
広島(佐々岡監督) | 15 | 26 | .366 |
西武(辻監督) | 14 | 31 | .311 |
ソフトバンク(工藤監督) | 8 | 22 | .267 |
ヤクルト(高津監督) | 10 | 31 | .244 |
阪神(矢野監督) | 19 | 32 | .238 |
オリックス(中嶋監督代行) | 4 | 14 | .222 |
中日(与田監督) | 7 | 28 | .200 |
オリックス(西村監督) | 4 | 16 | .200 |
BBNEWSの記事に掲載されていた、2020年のリクエスト成功率です。どの球団も50%を超えることはなく、2回に1回以上は判定通りとなっております。

リクエスト回数
監督 | 成功率 |
---|---|
楽天 | 50 |
DeNA | 50 |
日本ハム | 54 |
巨人 | 31 |
ロッテ | 43 |
広島 | 41 |
西武 | 44 |
ソフトバンク | 30 |
ヤクルト | 41 |
阪神 | 51 |
オリックス | 38 |
中日 | 35 |
2020年の記録になりますが、単純計算で3試合に1回はリクエストしていることになります(1シーズン144試合)。
各審判員の成功率
審判員別リクエスト成功率
— seVen (@sevenislandsz1) June 11, 2022
僕は常々、審判の判定には従う立場だったけど、いざ判定で揉めた場合には選手や元選手の眼の方が審判員さんの眼よりも正しいと思ってた。
しかしこれを見ると、いざ揉めた場合に限っても審判員の方が正しいケースが多いんですね。
牧田さんと佐々木さん優秀なんですね。 pic.twitter.com/4N5bKMrS0N
2017年シーズンを基に作成されたそうです。リクエストにも、回数が余っていることから気軽に申請するパターンや、本気で誤審だと思い申請したパターンなど様々です。
そのため、このデータも何か有力な結論を持った集計ではありません。参考程度で記載していることご理解ください。
MLBのリクエスト制度
MLBでは、チャレンジと呼ばれます。2014年から導入されていますが、日本のリクエスト制度と異なる点が大きく2つあります。
MLBとNPBの制度比較
NPBとMLBの主な相違点を整理すると、運用思想の違いが見えてきます。
項目 | NPB | MLB |
---|---|---|
要求権者 | 監督 | 監督(チャレンジ) |
回数の考え方 | 各試合2回。成功時は回数消費なし。延長で追加 | 原則1回(ポストシーズン等で拡張)。成功時は継続可 |
検証体制 | 審判団が映像で確認(将来的にセンター集約が議題になりやすい) | リプレイセンターで一括検証 |
対象プレーの幅 | アウト/セーフ、フェア/ファウル、本塁打関連、衝突・危険スライディングなど | 同様だが運用細目に差がある |
判定維持の原則 | 明確な根拠がなければ元判定維持 | 明白で決定的な証拠がなければ元判定維持 |
場内アナウンス | 球審が結果を告知 | 球審がマイクで詳細を告知(説明がやや丁寧) |
日本と異なる点
回数 | 6回までに1度、7回以降は試合終了までに2度 |
確認方法 | 審判以外のビデオチェックメンバーを用意 |
試合時間短縮の目的から、回数はイニングごとに制限がされています。また、日本では審判員自らがビデオ判定するのに対し、MLBでは第三者組織が確認します。
リクエスト制度まとめ
リクエスト制度が採用されたことで、誤審によって試合の勝敗が左右されてしまうリスクが軽減されました。しかし、まだまだストライク/ボールなどの不確定要素の判定を巡って、審判員の方への誹謗中傷が絶えません。
今後、このように野球の判定もデジタル化していくかもしれませんね。個人的には、流れや審判の判定もあっての野球という考えなので、その判定も受け入れて観戦しています!