勝利投手の条件はおかしい?プロ野球/MLBそれぞれの勝ち投手を解説!

勝利投手の条件

プロ野球を観ていて「え、なんでこの投手が勝ち投手になるの?」と疑問に思った経験はありませんか。先発が打たれながらも勝ち投手になったり、逆に無失点で好投した中継ぎに勝ちがつかなかったりする場面は、多くのファンにとって「おかしい」と感じる瞬間です。

実は、この違和感は多くの人が抱いているものであり、プロの選手や評論家からもたびたび指摘されています。勝利投手のルールは明確に定められているものの、その仕組みが必ずしも投手の実際の貢献度と一致しないため、違和感が生まれるのです。

そこで本記事では、勝利投手の条件を整理したうえで、なぜ「おかしい」と感じるのかを具体例とともに解説します。

このページでわかること

  • 勝利投手の基本的なルールと条件(先発・リリーフの違い)
  • 「おかしい」と感じる具体的な事例とその背景
  • 識者やファンからの批判や見直しの声
  • QSやWARなどの代替指標とその意味
  • MLBとの比較や制度の歴史的背景
目次

勝利投手(勝ち投手)とは

野球場 フリー

勝利投手とは、登板した試合を勝利に導いた投手として記録します。

主に先発投手に記録されますが、投球回数によってはたとえ試合に勝っても勝利記録はされません。

特に2桁勝利(10勝)を超えるとすごいと評価され、そのチームを代表するピッチャーであることは間違いないです。

勝利投手の条件

(b) 先発投手は、次の回数を完了しなければ勝投手の記録は与えられない。

(1) 勝チームの守備が6回以上の試合では5回。

(2) 勝チームの守備が5回(6回未満)の試合では4回。

先発投手が本項を満たさないために救援投手に勝投手の記録が与えられる場合は、救援投手が1人だけであればその投手に、2人以上の救援投手が出場したのであれば、勝利をもたらすのに最も効果的な投球を行なったと記録員が判断した1人の救援投手に、勝投手の記録を与える。

出典:公認野球規則 9.17

 
勝利投手については公認野球規則9.17で定められています。

  • 味方がリードをしている直前に投げていた投手が勝利投手
  • 先発投手が勝利投手となるためには5回を投げ切ることが必要【5回途中はNG】
  • リリーフ投手が勝利投手となるためには投球内容を記録員が評価

結論、以上の条件を達成していれば、勝利投手となります。

5回の試合では4回と記載があるのは、少年野球などが想定されています

MLB

基本的には日本のプロ野球と同じです。しかし、1イニング未満且つ2失点以上している場合は勝利投手になれません。

ここでいう失点は自責点ではないため、前の投手が残したランナーを返された場合でも失点扱いです。

自責点:自己責任の失点(前のリリーフが残したランナーは自責点に含まない)

リリーフ(救援)投手が勝利投手

野球 審判 フリー

【原注】 救援投手が勝投手として記録されるには、その投手が最低1イニングを投球するか、試合の流れ(スコアも含む)の中で試合を決定づけるアウトを奪うこと、というのが本項の趣旨である。

最初の救援投手が効果的な投球をしたからといって、ただちに その投手に勝を与えるべきではない。なぜなら、勝投手は、最も効果的な投球をした投 手に与えられるものであり、続く救援投手が最も効果的な投球を行なうかもしれないからである。

どの救援投手に勝を与えるかを決定するには失点、自責点、得点させた走者数、試合の流れを考慮しなければならない。もし2人以上の投手が同程度に効果的な 投球を行なった場合は、先に登板した投手に勝を与えるべきである。

出典:公認野球規則 9.17

先発投手ではなく、リリーフ投手が勝利投手になることに関して、野球規則には上記のように記されております。
 
つまり、複数のリリーフ投手がいた場合は、勝ちにつなげた投手を記録員が決めます。ロングリリーフをして、試合の流れを作りつつ、5回を跨いだ方が勝利投手になりやすい印象があります。

ワンポイントリリーフ

c) 救援投手が少しの間投げただけで、しかもその投球が効果的でなかったときに、続いて登板した救援投手の中にリードを保つのに十分に効果的な投球をした投手がいた場合は、前者に勝の記録を与えないで、続いて登板した救援投手の中で最も効果的な投球をしたと記録員が判断した投手に勝を与える。

出典:公認野球規則 9.17

リリーフ投手の勝利投手については、上記のようにも野球規則に記載されております。決定はあくまでも記録員の判断という点が重要です。

ワンポイントリリーフ:1打者だけなど要所のみ登板する投手のこと

勝利投手の決め方(事例)

勝利投手の決め方を事例を交えながら解説します!

セーブか勝利投手か

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先発:7回3失点/中継ぎ:1回2失点/抑え:1回無失点
  • 先制は巨人
  • 巨人の先発は7回3失点
  • 巨人リリーフが8回裏に同点に追いつかれる
  • 巨人が9回表に勝ち越し
  • 9回裏は守護神が無失点に抑えてゲーム設定

この場合、勝利投手は先発、中継ぎ、抑えのだれになるでしょうか。

答えは中継ぎ投手です。同店によって、勝利投手の権限はリセットされているため、先発に勝利はまず付与されません。つまり、中継ぎか救援が勝利投手となります。

勝利投手の規則では「リードの直前にマウンドに立っていた投手」になるため、中継ぎが勝利投手です。

リード直後の投手を勝利投手にしてしまうと、意図的に勝利投手を作りやすくなってしまいます

9回を9人でリリーフした場合

野球ファンであれば、だれもが1回は疑問に思うかもしれません。9回を1イニングずつ、9名で回した場合はどの人が勝利投手になるでしょう。

  • 先発は勝利投手権限なし
  • リードしたタイミング

上記による制約はありますが、例えば初回に先制した場合は、先発と抑え以外の7名に勝利投手の権利が付与されます。ルール上はこの7名のなかから記録員が勝利投手を選びます。

セーブが付かない状況であれば、9回を締めた投手も勝利投手の対象ですね

なぜ勝利投手の条件が「おかしい」と感じるのか?

勝利投手は「試合の流れがどの投手の在任中に決まったか」で記録されます。そのため、実際の投球内容よりもタイミングが優先されることがあり、貢献度と記録がずれる場面が生まれます。

打たれても勝ち投手になる先発の例

結論から言えば、先発は「5回以上を投げて退く時点で自軍がリードし、その後逆転されなければ」勝利投手になります。内容が悪くても条件を満たせば勝利が記録されるため、違和感が生じます。

状況スコア推移投手の状態ポイント
5回終了時自軍6−5相手先発が5回5失点規定の5回を投げ切り、退く時点でリード
終盤最終的に8−5で勝利救援陣が無失点リードを守り切ったため先発に勝利が記録

この例では防御率は悪く見える一方、ルール上は条件を満たしているので勝利がつきます。内容評価と記録評価は別物であることを押さえると理解しやすくなります。

好投した中継ぎに勝ちがつかない例

中継ぎの勝利は「チームが勝ち越した瞬間に投げていた投手(無効と判断されない限り)」に記録されます。長いイニングをゼロでつないだ投手より、直前に登板した投手に勝利が付くことがあります。

  • 前提
    ↳先発が早めに降板し、A投手が5回途中から7回まで無失点で好投
  • 勝ち越しの瞬間
    ↳8回表にB投手へ交代中、味方が8回裏に勝ち越し点を取る
  • 記録の帰属
    ↳勝ち越し直前に投げていたのはB投手のため、Bに勝利が記録

公式記録員は「短い登板で明らかに不出来」と判断した場合に限り、より効果的だった投手へ勝利を与える裁量があります。ただし、その判断基準は厳めで、通常は登板のタイミングが優先されます。よって、内容が良かったA投手に勝ちがつかず、観る側に違和感が残りやすい構図になります。

一球だけで勝利投手になるリリーフの例

リリーフは「自軍がその後の攻撃で勝ち越し、最後まで逆転されない」状況を作った時点で、在任中の投手に勝利がつきます。極端なケースとして、一球のみで勝利が記録されることもあります。

スクロールできます
場面出来事結果
7回表・同点・二死一塁C投手が登板し、初球で内野ゴロに打ち取り攻撃終了わずか一球でイニング終了
7回裏味方が1点を奪いリード以後逆転されず勝利
記録C投手は勝ち越しが起きた時点の投手Cに勝利が記録(一球勝利)

このケースでは投球内容の量ではなく、勝ち越しが起きたタイミングとの結びつきが決定要因になります。効率よくアウトを取った功績はあるものの、登板量とのギャップが大きいため、直感的な違和感を生みやすい事例です。

シーズン最多勝投手一覧

tipsとして、最多勝投手を一覧で紹介します。

セ・リーグ

年度選手(チーム)勝利数
2024菅野智之(巨人)15
2023東克樹(DeNA)16
2022青柳晃洋(阪神)13
2021青柳晃洋(阪神)13
2021九里亜蓮(広島)13
2020菅野智之(巨人)14
2019山口俊(巨人)15
2018大瀬良大地(広島)15
2018菅野智之(巨人)15
2017菅野智之(巨人)17
2016野村祐輔(広島)16
2015前田健太(広島)15
2014メッセンジャー(阪神)13
2014山井大介(中日)13
2013小川泰弘(ヤクルト)16
2012内海哲也(巨人)15

過去10年、DeNAとヤクルトが最多勝投手を輩出しておりません。

ヤクルトは優勝経験もありますし、DeNAもAクラスが安定しておりますが、最多勝投手はいなかったのですね。

Aクラス:3位以上(クライマックス出場権利獲得)

パ・リーグ

選手(チーム)勝利数
2024伊藤大海(日本ハム)
有原航平(ソフトバンク)
14
2023山本由伸(オリックス)16
2022山本由伸(オリックス)15
2021山本由伸(オリックス)18
2020千賀滉大(ソフトバンク)11
2020石川柊太(ソフトバンク)11
2020涌井秀章(楽天)11
2019有原航平(日本ハム)15
2018多和田真三郎(西武)16
2017菊池雄星(西武)16
2017東浜 巨(ソフトバンク)16
2016和田 毅(ソフトバンク)15
2015大谷翔平(日本ハム)15
2015涌井秀章(ロッテ)15
2014金子千尋(オリックス)16
2013田中将大(楽天)24
2012摂津 正(ソフトバンク)17

パ・リーグは過去10年、全球団最多勝投手を輩出しています。やはり、2013年の24勝はひときわ目立ちます(この年、田中将大は無敗で楽天を初優勝に導きました)

敗戦投手の条件

(d) 自己の責任による失点が相手チームにリードを許し、相手チームが最後まで そのリードを保ったとき、その投手に敗投手の記録を与える。

【原注】 試合の途中どこででも同点になれば、敗投手の決定に関しては、そのときから 新たに試合が始まったものとして扱う。

出典:公認野球規則 9.17

敗戦投手に関して、公認野球規則では上記のように記されております。

相手にリードさせた投手が敗戦投手となります。注意点としては1度リードさせても味方がその後に追いつけば、そこから試合が始まったことになります。

そのため、たとえば同点で9回までいき、サヨナラ負けをした場合は、サヨナラをされた投手が敗戦投手です。先発投手に勝ち負けはつきません。

勝利投手/敗戦投手の条件まとめ

  • 勝利投手や敗戦投手に関しての条件は公認野球規則で定められている
  • プロ野球の場合、5回以上投げ切る必要がある
  • マウンドを降りた時点で味方が勝っていても、その後に追いつかれたリセット
  • リリーフ投手に勝利権利が移った場合、記録員が勝利に一番貢献した投手を選出して勝利投手とする
  • MLBの勝利投手の条件も日本のプロ野球とほぼ同じだが、失点とイニング数の考え方で若干異なる

勝利投手に関しては、時に記録員による判断もあるため、敗戦投手に比べると理解しづらいです。

そのため、最初は5回以上投げ切ってときにチームが勝っていて、そのまま追いつかれることなすチームが勝てば、先発投手に勝ちがつく、それ以外は付かないと覚えておきましょう。

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