野球を見ていると「振り逃げ」という言葉を耳にすることがありますが、実際にはどんなルールなのか知らない方も多いのではないでしょうか?
三振したはずの打者が突然走り出す場面に、戸惑った経験を持つ人も少なくありません。特に少年野球や中学野球では、ルールを正しく理解していないと誤解やトラブルの元になることもあります。
この記事では、「振り逃げ」の基本ルールから具体的な成立条件、実際のプレーでの流れや審判の判断基準まで、初心者にもわかりやすく丁寧に解説していきます。
このページでわかること
- 振り逃げの定義と基本ルール
- どのような状況で振り逃げが成立するのか
- プロ野球や少年野球での振り逃げの事例
- 審判の判断やコールとの関係
- 観戦や指導に役立つ振り逃げの理解法
野球の振り逃げとは

振り逃げとは、三振した際に捕手が完全捕球できていない場合、アウトとは判定されないプレーを指します。
アウトカウントに余裕があり、且つ塁が詰まっている場合には適用されないなど、振り逃げはルールが分かりづらいです。そこで下記では、振り逃げの概要や細かいルールをまとめました。
野球規則
公認野球規則に「振り逃げ」という言葉は存在しません。事実上の振り逃げとして以下のように定められています。
打者が走者となったために、進塁の義務が生じた走者が次の塁に触れる前に、野手がその走者またはその塁にタッチした場合。(このアウトはフォースアウトである)
出典:公認野球規則7.08e
打者が走者になるケースとして紹介しています(本来、打つか四死球の場合に打者は走者となります)。
ルール
打者が三振をし、キャッチャーが捕球できなかったとき、以下2つのいづれかの条件を満たしていれば打者は走者となり「振り逃げ」が成立します。
- 一塁が空いている
- ツーアウトの場面
キャッチャーの捕球
空振り三振、見逃し三振いづれにおいても捕手が捕球できなければ、振り逃げは成立します(上記ルールをクリアしたと仮定する)。
プロ野球では、捕手が捕球をミスすることはあまりないですが、見逃し三振であっても捕手が投手の投げたボールを捕球することができなければ、振り逃げは成立します。
振り逃げの由来
「振り逃げ」という言葉は公認野球規則には存在しません。
打者が三振したにもかかわらず走者になるケースのほとんどが「ワンバウンドするボールを打者が空振り、捕手がボールを後ろに逸らしてしまう」ケースです。
そのため、振ったにもかかわらず一塁に逃げるプレーから「振り逃げ」と表現されるようになりました。
振り逃げの成立条件と成立しない条件
振り逃げは、通常の三振とは異なる特別なプレーです。打者が三振しても、ある条件を満たせばアウトにならずに1塁へ走れる場面があるのです。
このルールはプロ野球から少年野球まで共通していますが、意外と知られていないため、観戦中や指導中に混乱が起きやすい部分でもあります。
振り逃げが成立する条件
振り逃げが成立するためには、主に以下の2つの条件が必要です。
- キャッチャーが第三ストライクを直接捕球していない
- 塁状況とアウトカウントが特定の条件を満たしている
たとえば、
状況 | 可否 | 理由 |
---|---|---|
2アウト・ランナーあり/なし | 可能 | 1塁が埋まっていても適用される |
0〜1アウト・1塁空き | 可能 | 1塁が空いていれば走塁可能 |
0〜1アウト・1塁埋まり | 不可能 | 振り逃げによる余計な走塁混乱を防ぐため |
このように、振り逃げが可能かどうかは塁状況とアウト数の組み合わせにより決まります。1アウトでも1塁が空いていれば、振り逃げのチャンスはあります。
振り逃げが成立しないケース
振り逃げが成立しない代表的なパターンについても押さえておくと、実際のプレー時に混乱が少なくなります。
- キャッチャーがノーバウンドでボールを捕った
- 無死または1死で、1塁にランナーがいる
特に注意が必要なのが「捕球したかどうかの見極め」です。見た目には落球に見えても、ミットに収まっていれば振り逃げにはなりません。逆に、明らかにボールをこぼしていれば、審判が三振をコールしていてもプレーは続行扱いとなります。
このように、打者も守備側も瞬時の判断が求められるため、あらかじめルールを理解しておくことが重要です。

【問題】振り逃げは発生する?

下記パターンで振り逃げが発生するかしないか、是非考えてみてください!
パターン①
- 1アウト
- ランナー2塁
- 高めの球を空振り三振
- 捕手はキャッチできずボールは審判に直撃
答えはこちら
振り逃げは成立する
ランナーが詰まっておらず、捕手も捕球できていないため振り逃げは成立します。
パターン②
- ノーアウト
- ランナー1塁
- ワンバウンドの球を空振り三振
- 捕手はキャッチできずボールは後ろへ
答えはこちら
振り逃げは成立しない
ランナーが詰まっているため、捕手は捕球できていませんが、振り逃げは成立しません。
パターン③
- ツーアウト
- ランナー満塁
- ワンバウンドの球を空振り三振
- 捕手は胸でブロッキングをしてボールを後ろに逸らさなかった
答えはこちら
振り逃げは成立する
ランナーは詰まっていますが、ツーアウトになるため、捕手が捕球できなかった場合は振り逃げが成立します。

振り逃げのブレー集
実際の振り逃げのプレーをみてみましょう!
振り逃げ3ラン
2007年の神奈川県大会準決勝「東海大相模VS横浜」の試合です。ツーアウトの場面になるため、振り逃げが成立しますが、横浜高校はベンチに帰ってしまいます。
東海大相模はそのルール通りに、振り逃げでホームまで打者が生還し、3点獲得しました。
東海大相模VS横浜は22年夏大会のアピールプレー事件のように、珍プレーが起きますね。
振り逃げ3ラン
打者が空振りした投球が後方にそれていく。これをキャッチャーが見失ってしまい、打者走者が一気に3塁を陥れる。振り逃げ三塁打という相当な珍プレーが発生した2015年の出来事をプレイバック
出典:Youtube
打者が走者に変わっているため、進塁に対する制限はありません
まとめ|振り逃げを理解して野球をもっと楽しもう
この記事では、振り逃げという一見すると特殊に思えるルールについて、その定義から成立条件、実際のプレーにおける影響まで幅広く解説しました。三振してもアウトにならない可能性があるという例外ルールは、野球の奥深さを象徴する要素の一つです。
振り逃げは、キャッチャーの捕球や塁の埋まり方によってプレーの成否が決まるため、選手や指導者、観戦者にとっても知っておくべき知識です。少年野球では混乱の原因にもなりやすいため、事前にしっかりと説明し、選手が状況判断できるようにすることが求められます。
実際に振り逃げの場面に遭遇したときは、塁状況とアウトカウント、そしてキャッチャーの捕球の有無に注目してみてください。それだけで野球の見方が大きく変わるはずです。