長打率は、打者がどれだけ遠くまでボールを運んだかを数値で表す指標です。単打・二塁打・三塁打・本塁打をそれぞれ異なる価値として数え、打数で割って求めます。
打率が「ヒットの多さ」をとらえるのに対し、長打率は「ヒットの質」まで踏み込めるため、打撃力の輪郭がより鮮明になります。数式はシンプルなので、初めての方でもすぐに計算できます。
このページでわかること
- 長打率の意味と計算式(塁打数 ÷ 打数)の要点
- 単打・二塁打・三塁打・本塁打のカウント方法
- 打率・出塁率・OPSとの違いとつながり
- 具体例を使った長打率の計算手順
- 長打率を成績比較や評価に生かすコツ
長打率とは

長打率とは、1打席あたりの塁打数の平均値のことです。
上記を計算することで、その打者がどれだけ長打を打てるのか、パワーをもっているのかといった分析に役立てることができます。塁打数とは、ヒットなら1とカウントされます(以下参照)
塁打数
ヒット | カウント |
---|---|
単打 | 1 |
二塁打 | 2 |
三塁打 | 3 |
本塁打 | 4 |
この塁打数を打数で割ることで計算出来ます。つまり、100打席で400塁打であれば、4となります。それでは詳しく計算方法をみていきます。

長打率の計算方法
上記の式で計算された値が「長打率」です。高ければ高いほど、長打を打てるパワーを持つ選手という考察ができます。
打数とは
- バント
- 四球
- 死球
- 犠牲フライ など
打数とは、打席数から上記を引いた数値になります打席が完了した回数を指した言葉が「打数」です。
注意点
長打率は「長打を打つ確率」ではなく、どれだけ長打を打っているかを図る指標になります。
打率が「ヒットを打つ確率」なので混同させがちですが、注意しましょう。
長打率の計算例

この選手の長打率は、4(塁打)×20(ホームラン数)÷100(打数)=8です。
つまり「長打率:8.00」となりますちなみに、こちらの打者の打率は.250になります。長打率は1.00を超えることもあるので注意しましょう。
長打率と他の打撃指標との違い
長打率は「ヒットの質」を数値化するため、打率や出塁率と並べて見ると打者像が立体的になります。この章では、打率との違い、出塁率やOPSとの結びつき、そして長打率から読み取れるタイプ分けを整理します。
打率と長打率の違い
打率と長打率は、どちらも打数を分母に取る点は同じでも、評価の観点が異なります。違いを端的に把握できるよう、主要ポイントを並べて比較します。
項目 | 打率(AVG) | 長打率(SLG) |
---|---|---|
定義 | 安打数 ÷ 打数 | 塁打数 ÷ 打数(単打1・二塁打2・三塁打3・本塁打4) |
評価の焦点 | ヒットの「頻度」 | ヒットの「質(長打力)」 |
同じ安打数でも差が出るケース | 単打が多いと高くなりやすい | 長打が多いほど伸びやすい |
弱点 | 四球・死球を評価できない | 四球・死球を評価できない/打率が低いと上がりにくい |
読み取り方のコツ | ミート力やコンタクトの安定性の目安 | 長打力・長距離砲としての脅威度の目安 |
打率が同程度でも、長打率の差が大きいと「同じ3割打者でも破壊力が違う」と判断できます。逆に長打率が高くても打率が低い場合は、当たれば大きいが波があるタイプと読み取れます。
出塁率・OPSとの関係性
長打率は、出塁率(OBP)と組み合わせると「塁に出る力」と「進塁させる力」の両面がつかめます。指標同士の役割分担を、要点ベースで押さえましょう。
- 出塁率(OBP)の役割
↳(安打+四球+死球)÷(打数+四球+死球+犠飛)。四球や死球も含め、アウトにならない能力の把握 - 長打率(SLG)の役割
↳塁打数÷打数。ヒットに重みづけを行い、長打力と得点期待への直結度を把握 - OPSの意味合い
↳OPS=OBP+SLG。出塁と長打を合算し、総合的な打撃貢献の簡易指標として使える - 読み解きの型
↳OBP高×SLG高=攻撃の主軸/OBP高×SLG低=出塁型/OBP低×SLG高=長打特化/両方低い=課題多め
OPSは便利な一方、盗塁・走塁や打席状況の文脈は含みません。精度を上げたいときは、チーム文脈(打順、球場特性、対戦投手)と合わせて評価すると理解が深まります。


長打率の目安と歴代ランキング
22年シーズンで令和初の3冠王に輝いた村上選手の長打率は0.710です。個人的に、ほとんど好打者(日本を代表するバッター)は0.5くらいは長打率がある印象です。
歴代ランキング
順位 | 選手 | 長打率 | 年度 |
---|---|---|---|
1 | バレンティン(ヤクルト) | .779 | 2013 |
2 | バース(阪神) | .777 | 1986 |
3 | 落合 博満(ロッテ) | .763 | 1985 |
4 | 王 貞治(巨人) | .761 | 1974 |
5 | カブレラ(西武) | .756 | 2002 |
シーズン本塁打記録をバレンティン選手が塗り替えたときで.779となります。7割を超えてくる打者は長打力があることは間違いないですね(規定打席到達者)
長打率で見る選手のタイプと特徴
長打率のレンジから、打者の傾向をざっくり把握できます。リーグや時代で水準は変動するため、目安として参照してください。
長打率の目安 | タイプ像 | 観察ポイント |
---|---|---|
〜0.350 | 軽打・単打寄り | 出塁率が高ければリードオフ適性。ゴロ傾向や打球速度を確認 |
0.350〜0.450 | 平均的な長打力 | 二塁打の多さと打球角度の安定性。球場の広さの影響も考える |
0.450〜0.550 | 中長距離ヒッター | 長打と三振のバランス。四球と合わせて総合力をチェック |
0.550以上 | 強打者・長距離砲 | 本塁打率と二塁打率の内訳。勝負回避(敬遠)でOBPが伸びる傾向 |
小サンプル期間は変動が大きく、極端な数値が出やすい点に注意が必要です。年間を通じた打席数が増えるほど長打率は実力に近づき、タイプ判定の精度も上がります。
長打率まとめ
- 長打率はその打者にどれだけ長打力があるかを分析できる1つの指標
- 長打率は長打を打てる確率ではないため注意(打率と混同させがち)
- 長打率は、塁打数÷打数で算出できる
- 塁打数とは、ヒットが1、ホームランが4といったように、進んだ塁でカウントした数値
- 打数とは、打席からファーボールや犠牲フライを抜いた値
長打率によって、その打者がどれだけパワーを持っているか推察することができます。
個人的に5割あれば好打者だなという印象です。
再掲になりますが、長打を打つ確率ではないので、注意です!