高校野球の球数制限や500球ルールについてご存知でしょうか。一人が多く投球してしまうと、選手生命を奪うほどの故障に繋がります。そんな事態に陥いることを防ぐ目的で球数制限が設けられました。
そこで本記事では、高校野球の球数制限についてご紹介します。
本記事を読むことで、球数制限のルールやについて知ることができます。過去に最も多く投球を行った投手のランキングもご紹介しますので、最後まで是非記事をご覧ください。
高校野球の球数制限とは
球数制限とは、選手のケガ防止を目的とした、試合の中で投球できる球数ルールです。球数制限は1週間で投げられる球数が500球と定められて、2020年の春の選抜大会から導入されています。
ただ、2020年は新型コロナウイルスの流行により、春夏ともに甲子園大会が中止されたため、同年の秋季大会から導入されました。
投手は大会期間中、1週間の間に合計500球を超えた場合は降板して、1週間が経過するまで登板できなくなります。
500球ルール
1週間で投げられる球数が500球と定められたため、500球ルールと言われることもあります。
球数制限導入のきっかけ
球数制限のきっかけは、2019年に新潟高校野球連盟が、1試合100球を上限とする制度を導入したことです。このときには、500球ルールの制度は見送られましたが、球数制限の必要性を考えるきっかけとなりました。
エースが一人で投げ抜き、甲子園で勝ち上がるのは、過去に何度もありましたが、肩や肘の消耗が激しく、ケガのリスクが上がります。
実際に、甲子園で肩や肘を酷使した選手が、大学やプロに進んだ際、ケガに悩まされて、思うように結果を出せないまま選手生命をたたれたケースは数多くあります。
このような事態を防ぐためにも、日本高校野球連盟は、2020年から500球ルールの制度を取り入れました。
高校野球の球数制限のルール
球数制限には、下記の3つのルールがあります。
- 1人のピッチャーが1週間で投げられる球数の上限は500球
- 降雨などでノーゲームになった場合でも球数はカウント
- 登板途中で500球に達した場合、その時点で対戦しているバッターの打席が終了するまで投球可能
1人のピッチャーが1週間で投げられる球数の上限は500球と定められており、降雨などでノーゲームになった場合でも球数はカウントされます。もし登板中に500球に達した場合、その時点で対戦しているバッターの打席が終了するまで投げることができ、終了後に降板です。
万が一、500球を超えて降板した後は、1週間の期間がすぎるまでは登板できません。
適用期間
球数制限が適用される期間は大会運営側が決めます。
たとえば、甲子園の決勝までの1週間が対象となった場合、直近1週間のうちに5試合が組まれていたら、1試合あたり100球が降板の目安になるというように考えられます。
このように、定められた期間の中で残りの球数を把握し、ピッチャーをどのように起用するかが重要となるでしょう。
球数制限(500球ルール)のメリット
選手のケガ防止
制度導入の理由である、ケガの防止は一番のメリットと言えるでしょう。
ピッチャーの生命線である、肩や肘は消耗品です。人の体は負荷をかけたら疲労が残りますが、同時に疲労を回復させる力もあります。
しかし、疲労が蓄積され回復が終わらないままさらに負荷をかけると、体のダメージは徐々に大きくなっていきます。ダメージが大きくなり体が負荷に耐えられなくなると、故障という形で異常をきたし、プレーができなくなる事態になりかねません。
ケガの程度によっては、今後の野球人生に影響を及ぼすほど重い場合もあります。球数制限を設けることで体の負荷を軽減し、将来上のレベルで野球をする際にも、しっかりと力を発揮できるための効果が期待できるでしょう。
控え選手の登板機会が増える
圧倒的なエースが一人で投げ抜く場合、控えピッチャーが試合で投げる機会が減ってしまいます。
試合で投げる機会がないと試合経験を積むことができず、いざ試合で登板しても雰囲気に飲まれて本来の力を発揮できません。しかし、球数制限があることでエース一人では勝ち上がることが難しくなり、控えピッチャーの登板機会が増えてきます。
登板した試合で結果を出し続けると、エースになるチャンスも手に入れられるかもしれません。
2022年、夏の甲子園で優勝した仙台育英のように、複数の投手を抱えるチームが勝ち上がる傾向が今後強まっていくでしょう。
球数制限(500球ルール)のデメリット
投手が複数いる高校が有利になる
球数制限が設けられたことで、複数の投手を用意する必要性が増えてきました。
そのため、多くの部員を抱える強豪校が有利になる可能性があるのではないでしょうか。
複数の投手を用意することで球数を分散でき、連戦にも対応できるようになります。逆に部員数の少ない学校では複数の投手を用意することが難しく、ピッチャー経験の浅い選手を起用せざるを得ないケースも懸念されます。
このような事態に対する高野連側の対応策は現在ないため、各校のやり方に任せているのが現状です。
球数制限に対する戦力格差の拡大は、今後の課題となるでしょう。
あえて球数を投げさせる戦法をとってくる
球数制限があることで、あえて球数を多く投げさせる戦法をとってくる可能性も出てきます。ボールを見極めてきたりボールをカットしたりするなど、ピッチャーの球数を稼ぐ方法はさまざまです。
過去に夏の甲子園で「カット打法」が話題になりましたが、今後さまざまな戦法で、相手ピッチャーを投げさせて降板に追い込む戦法が増えてくる懸念もあるのではないでしょうか。
ちなみに、現在カット打法は高校野球において禁止されています。
選手のメンタルケアが必要
高校を卒業してからも大学や社会人、プロ野球とさらにレベルの高い世界で野球をしていく選手がいます。一方で、高校野球を野球人生の集大成と考え、燃え尽きるまで頑張りたいと考える選手もいます。
その中で、球数制限があることで、勝つために自分がもっと投げたいのにマウンドを降りなければいけない事態になることも十分に考えられます。投げたいのに投げられないのは、選手にとってとても悔しいことです。
高校3年の夏の大会であればさらに強く思うことでしょう。
そのときに、指導者がどのように選手のメンタルケアをしてあげられるかが重要になっていきます。野球人生を賭けた3年間の重さは並大抵のものではありません。今後、今までとは違った形で選手と向き合うことが必要となるでしょう。
過去の最多投球数ランキング【夏の甲子園】
夏の甲子園の投球数ランキングをご紹介します。
順位 | 投手 | 高校 | 年度 | 球数 |
---|---|---|---|---|
1 | 斎藤佑樹 | 早稲田実業 | 2006 | 948 |
2 | 吉田輝星 | 金足農業 | 2018 | 878 |
3 | 川口知哉 | 平安 | 1997 | 820 |
4 | 今井重太郎 | 三重 | 2014 | 814 |
5 | 島袋洋将 | 興南 | 2010 | 783 |
6 | 大野愉 | 沖縄水産 | 1991 | 773 |
7 | 松坂大輔 | 横浜 | 1998 | 767 |
8 | 吉永健太郎 | 日大三 | 2011 | 766 |
9 | 福岡真一郎 | 樟南 | 1994 | 742 |
10 | 吉岡基紀 | 京都成章 | 1998 | 713 |
決勝戦まで進んだ投手が当然球数は多くなる傾向にあるため、優勝投手、準優勝投手がずらりと並びます。
投球数ランキング1位は2006年、早稲田実業・斎藤佑樹です。駒大苫小牧・田中将大との決勝戦はあまりにも有名ですね。その投球数は948球にも上り、壮絶な夏を印象付けます。
また、2位には記憶に新しい2018年、金足農業・吉田輝星がつけています。
878球を投げ切り、甲子園のスターとして一躍注目を浴びました。
仮に当時、この1週間500球ルールが存在していたとすると、早稲田実業VS駒大苫小牧の決勝引き分け再試合や、吉田輝星の躍進など、甲子園の数々の名場面は誕生していなかったのかもしれません。
高校野球の球数制限まとめ
今回は、高校野球の球数制限について、ご紹介しました。
球数は、1週間に500球と決められているため、今後の戦い方に大きな変化が起こるかもしれません。
球数制限を導入することは、メリットやデメリットもありますが、選手のケガを予防する上では、非常に有効でしょう。
これからも高校野球を応援していき、選手たちに熱いエールを送り続けましょう!