野球を観戦していると「WHIP」という言葉を耳にすることがありますが、具体的にどんな意味なのか分からないという方も多いのではないでしょうか。
WHIPは投手の能力を評価するための重要な指標であり、野球をより深く楽しむうえで知っておくと便利です。この記事では、WHIPの定義や計算方法、他の指標との違い、実際の活用例までを初心者にもわかりやすく解説します。
このページでわかること
- WHIPの正式名称とその意味
- WHIPの計算式と成り立ち
- 良いWHIPの目安と評価基準
- ERAなど他の指標との違い
- プロ野球選手の実際のWHIP事例
WHIPの基本|意味と計算式を理解しよう

WHIPは「Walks plus Hits per Inning Pitched」の略で、直訳すれば「1イニングあたりの与四球と被安打の合計」を意味します。この指標は、投手がどれだけの走者を許したかを測るもので、安定した投球ができているかを判断する基準として使われます。
防御率(ERA)とは異なり、失点ではなく「出塁を許したかどうか」を評価するため、よりシンプルに投手の安定感を把握することができます。
WHIPとは?正式名称と意味
項目 | 回答 |
---|---|
用語 | WHIP |
読み方 | ウィップ |
正式名称 | Walks plus Hits per Inning Pitched |
WHIPは「Walks plus Hits per Inning Pitched」の頭文字を取った略語です。日本語では「1イニングあたりの与四球+被安打」と訳され、投手が相手打者にどれだけ塁に出られているかを示す指標となります。
この数値が低ければ低いほど、走者を出していない、つまり安定した投球をしていることを意味します。防御率と違い、味方の守備やタイミングに左右されにくいため、よりピッチャー個人の能力を反映しやすいとされています。
計算方法
WHIP = 与四球数 + 被安打数 ÷ 投球回数
与四球数(よしきゅう)は投手が打者に与えた四球と死球を足した数です。被安打数(ひあんだすう)はヒットを打たれた数を指します。
計算例
ピッチャーAが先発で7イニング投げて、被安打3と与四球2の投球内容だった場合。
被安打3+与四球2÷7=0.71428….
上記の計算式となり、WHIPは約0.7となります。それでは、このピッチャーAは相対的にみてどのような評価ができる投手なのでしょうか。
WHIPの目安と評価基準
WHIPの数値は、投手の安定性や実力を評価するうえでの基準となります。一般的な目安は以下の通りです。
- 1.00以下
↳非常に優秀な成績で、リーグ屈指のエース級に相当 - 1.10〜1.30
↳平均的な好投手。チームの先発ローテーションで信頼されるレベル - 1.50以上
↳走者を多く出しており、改善の余地が大きい
数字だけを見ると小さな違いに思えるかもしれませんが、シーズンを通して見れば、その差は大きな結果の違いを生み出します。WHIPが低い投手は、それだけで試合を作る力があると考えられます。

WHIPと他の指標との違い

投手の評価にはさまざまなデータが使われますが、ひとつの数値だけで結論を出すのは危険です。WHIPは投手の「安定感」を評価するうえで非常に有用な指標ですが、防御率(ERA)やFIP、K/BBなどと組み合わせて見ることで、より深く実力を分析できます。
WHIPとERAの違いを比較する
WHIPとERAはどちらも投手を評価するために使われる主要な指標ですが、見るポイントが異なります。
指標 | 意味 | 評価対象 | 特徴 |
---|---|---|---|
WHIP | 1イニングあたりの走者数 | 出塁させた数 | 守備や状況に左右されにくい |
ERA | 9イニングあたりの自責点 | 失点 | 守備の影響を受けやすい |
このように、WHIPは投手が出塁を許した頻度を評価するのに適しており、ERAは実際に失点したかどうかを見る指標です。両者を組み合わせることで、「走者は少ないが失点が多い」「走者は出すがしっかり抑える」といった傾向が見えてきます。

FIPやK/BBなど他指標との関係性
WHIP以外にも、投手の実力を評価する上で重要な指標はいくつかあります。中でもFIPやK/BBは投手自身の能力をより純粋に評価する指標として知られています。
指標 | 内容 | 見るポイント |
---|---|---|
FIP | 守備を排除して投球内容を評価 | 三振・四球・本塁打 |
K/BB | 奪三振と与四球の比率 | 制球力と攻撃力のバランス |
FIPは投手が直接コントロールできる結果だけに注目するため、守備の影響を受けない評価ができます。一方、K/BBは投手の制球力と打者との勝負強さを数値化しており、コントロール重視の投手か、パワータイプかなどの傾向も把握できます。
WHIPの使いどころと評価の注意点
WHIPは「走者をどれだけ出していないか」を表すわかりやすい指標ですが、万能ではありません。評価時に注意すべき点も存在します。
まず、被安打や与四球には運や守備力も影響しているため、数値がそのまま投手の責任とは限らない点です。また、短期的なデータでは偶然の要素も入りやすく、数試合でのWHIPだけを見て判断すると誤解を招く恐れがあります。
さらに、同じWHIPでも先発投手と中継ぎ投手では意味が異なります。中継ぎは短いイニングで好成績を出しやすいため、役割に応じた見方が求められます。評価の際は以下のような背景要素も確認すると信頼性が高まります。
- 先発か中継ぎかの役割
- 球場の特徴(広さ・風向きなど)
- 守備陣の実力や失策の頻度
- シーズン全体の推移やトレンド
WHIPは便利な指標である一方、コンテキストを無視すると判断を誤るリスクがあります。多角的に見てこそ、その真価が発揮されるのです。

WHIP(ウィップ)の目安
WHIP | 評価 |
---|---|
1.00以下 | 非常に素晴らしい |
1.10 | 非常に良い |
1.25 | 平均以上 |
1.32 | 平均 |
1.40 | 平均以下 |
1.50 | 悪い |
1.60以上 | 非常に悪い |
WHIPは1以下になると、非常に高い指標として評価されます。
先ほどの例の場合は「非常に素晴らしい」の評価となります。
注意点
WHIPは与四球数をプラスします。あくまで「投手が1イニングあたりに何人のランナーを許したか」を計測する指標であることを間違いないように注意してください。
WHIPの過去の記録(参考)

参考値として、WHIPの過去記録を紹介します!
WHIPランキング
順位 | WHIP | 選手名 |
---|---|---|
1 | 0.91 | 加藤貴之 |
2 | 0.93 | 山本由伸 |
3 | 0.94 | 今永昇太 |
4 | 0.97 | 青柳晃洋 |
5 | 1.04 | 大野雄大 |
1以下のWHIPを記録した投手は4人いました。選手名をみてもテンポが速く、試合時間が短いイメージがある投手ですね。
WHIPシーズンランキング
順位 | WHIP | 選手名 | 達成年 |
---|---|---|---|
1 | 0.7193 | 景浦将 | 1936秋 |
2 | 0.7483 | 村山実 | 1959 |
3 | 0.7489 | 小山正明 | 1956 |
4 | 0.7540 | 杉浦忠 | 1959 |
5 | 0.7628 | 村山実 | 1970 |
6 | 0.7718 | 野口二郎 | 1942 |
7 | 0.7747 | 広瀬習一 | 1942 |
8 | 0.8010 | 野口二郎 | 1940 |
9 | 0.8249 | 金田正一 | 1956 |
10 | 0.8265 | 林安夫 | 1943 |
シーズンの歴代ランキングになります。11位には、ダルビッシュ選手がランクインしています。
2011年のダルビッシュ選手のWHIPは0.8276と非常に高水準でした(2000年以降では1番良い評価です)。
WHIP通算ランキング
順位 | WHIP | 選手名 |
---|---|---|
1 | 0.9540 | 村山実(昌史) |
2 | 0.9642 | 野口二郎 |
3 | 0.9889 | 稲尾和久 |
4 | 0.9932 | 杉浦忠 |
5 | 1.0101 | 藤本英雄 |
6 | 1.0229 | 土橋正幸 |
7 | 1.0250 | 江夏豊 |
8 | 1.0300 | 小山正明 |
9 | 1.0406 | 荒巻淳 |
10 | 1.0567 | 皆川睦男(睦雄) |
2000イニング以上投げている投手を対象にしたWHIP成績です。
通算で1を切るWHIPは近い将来出てくることはないんじゃないかなと予想しています。通算でみても1イニング平均1人以下の出塁しか許していないことを意味しています。

まとめ|WHIPを理解して投手分析を楽しもう
WHIPという指標は、投手がどれだけ走者を出していないかをシンプルに表現するツールとして、データ野球において広く活用されています。この記事では、WHIPの意味や計算式、評価基準をはじめ、ERAやFIPなど他の指標との違いや組み合わせ方についても詳しく解説しました。
実際の数値を比較しながら見ていくことで、投手ごとの特徴や安定感、球場や守備の影響までが浮き彫りになり、単なる印象論では見えてこなかった面が明らかになります。
WHIPは投手の安定性を測るうえで重要な一面を担っていますが、あくまで評価指標のひとつにすぎません。他のデータと照らし合わせながら「どういうタイプの投手か?」を多角的に見ていくことで、より精度の高い分析が可能になります。